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決断力をもって診断を支える

太田 諒さん

平成17年度医学部医学科卒業
福井赤十字病院 病理部勤務
太田 諒さん

平成17年度医学部医学科卒業/福井赤十字病院 病理部勤務

太田 諒さん

少ない「病理医」

私は現在、病理医(病理専門医、細胞診専門医)として福井赤十字病院に勤務しています。病理医は、患者さんから採取された組織や細胞を、肉眼や顕微鏡で観察して診断する「病理診断」が主な仕事です。病理診断には、手術中に採取された検体を15 分程度で標本にして、切除範囲の決定などに役立てる術中迅速診断もあります。また、亡くなられた患者さんのご遺体を解剖して、病変の広がりや治療効果などを調べる「病理解剖」も行います。しかし、一般的な臨床医と違い、患者さんと直接関わることがほとんどない病理医は、社会的な認知度が低く、なり手が少ないために極めて不足しているのが実情です。専門医資格を持った病理医(病理専門医)は全国におよそ2000名いますが、そのうち福井県にはわずか9名しかおらず、最も少ない地域となっています。

人とは違う仕事がしたい!

私は、農学研究者である父の影響で、小さい頃から生物学や化学に興味があり、将来は父と同じような道に進みたいと思っていました。大学は薬学部か農学部で学びたいと考えていましたが、縁あって福井医科大学(現福井大学医学部)に入学しました。

医師になるためのさまざまな講義を受けるなかで、3年生のときに初めて病理学に出会いました。病理学はすべての臓器、あらゆる疾患を対象とするとても幅広い分野ですが、そのなかで実際に組織や細胞を観察して診断を行う診断病理学の存在を知りました。もともと人とは違うことをしたい性分であった私は、患者さんの診察や治療を行う一般的な医師のイメージとは少し違った、病理医という仕事に興味を持ちました。

医師国家試験合格後は、福井大学医学部附属病院で2年間の初期臨床研修を行いました。そのうち5か月間を病理部で研修し、毎晩日付が変わるころまで指導医とともに標本と向き合い、病理医としての基本姿勢を教わりました。他の診療科での研修期間においても、学生時代にお世話になった先生方が各科におられ、信頼できる同窓生が近くにいるという母校特有の利点があり、大変心強く、有意義な研修ができました。私は滋賀県の出身ですが、初期研修修了後も附属病院病理部に残って経験を積みました。平成22年に福井赤十字病院へ移り、現在に至っています。

医療において、病理診断はその後の治療方針を左右するとても重要な仕事です。常に新しいことを吸収しようとする姿勢が大切で、正しい知識に基づいた判断力と決断力が求められます。現在の職場は常勤病理医が私一人のみであり、診断に難渋することもありますが、大学から応援に来ていただいたり、大学へ出向いて合同で症例検討会を行ったりと、福井大学の厚い支援体制があり、頼もしく感じています。

自分のやりたいことを見つける

大学時代は、やる気さえあれば自由にやりたいことができる環境です。どんな分野でも興味のあることに首を突っ込んでみると、自分の知らなかった世界があることに気づきます。そのなかでぜひ自分のやりたいことを見つけてください。

卒業旅行では同級生とドイツに

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