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人工筋肉で飛ぶ昆虫ロボ救助隊!?(2011.9.10)

2011年9月10日 福井新聞

災害現場を飛び回るチョウたちは、実はロボット。滑らかに舞い、がれきの下から被災者を見つけ出し救助する。「昆虫ロボット救助隊」大活躍-。福井大大学院工学研究科の庄司英一准教授(48)の開発が進めば、こんな世界が実現するかもしれない。実現の鍵は「人工筋肉」。現在のモーター駆動とは全く違う、しなやかで優雅な動きをする、新しいロボットの誕生だ。
人口筋肉は、電気的な化学反応で伸びたるする特殊な膜を加工したもの。電圧をかけるとプラスイオンとマイナスイオンの作用で、約3センチぐにゃりと曲がる。プラスとマイナスを逆にすると、今度は反対側にぐにゃりと曲がる。なんだか手品を見ているようだが、この反応を素早く繰り返すことで、昆虫の羽ばたきを再現できる可能性があるという。
モーター駆動ではぎくしゃくした動きになるが、人工筋肉は小型で軽く、チョウの羽ばたきのようなしなやかな動きも実現できる。
現在、研究室にある人工筋肉の試験片は、長さ約10センチ、幅約1.5センチの板ガムのような形だ。「実用化には基礎データが重要」なため、2002年ごろから始まった研究では、人工筋肉の動きを測定する装置開発から取り組んできた。現在、人工筋肉は膜や電極の素材、加工方法などが改良され、大型化と量産化の道が見えつつあるという。
福島第一原発事故では、さまざまなロボットが活躍した。昆虫ロボットも災害救助などでの活用が期待されている。「今のロボットは1台が高価で、壊れたら換わりがない。昆虫ロボットを量産化したくさん飛ばせば、1つや2つ壊れても大丈夫」と庄司さん。熱い思いがこもった研究室前には、チョウ型ロボットの巨大な画像が張り出されている。
試験体を組み合わせて大きな表面をつくれば、大海をゆったりと泳ぐマンタのような動きも再現できるかもしれない。昆虫ロボット以外に、義手や義足などの医療などにも用途が広がりそうだ。
庄司さんが米国にいた01年9月、同時多発テロが起きた。「(当時住んでいた)カリフォルニア州でも、通りに人がいなくなった。何千人もの人が埋まり、余りにもショックだった」ことが忘れられないという。東日本大震災の発生から11日で半年。大災害で少しでも多くの命を救うため、世界初への挑戦が続く。

│ 2011年9月12日 │
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